こまつ町家で人間国宝のアート鑑賞 “小松市立錦窯展示館”
人間国宝だった三代徳田八十吉(1933-2009)の生家が、すてきな九谷焼の展示館になっています。
古きよき町並みが残る大文字町にある町家で、九谷焼の名品を楽しみませんか。
小松ならではのアート鑑賞の見どころをご紹介します。
地元ライター:松岡 理恵 (ラジオパーソナリティ)
写真:三代徳田八十吉 耀彩大皿「黎明」(写真提供:小松市立博物館)
三代徳田八十吉(とくだやそきち)ってどんな人?
国際的にも高く評価され、没後15年となる今なお、錦窯展示館には海外からファンが訪れています。
三代八十吉は、宝石のように輝くグラデーションが魅力的な「彩釉磁器(さいゆうじき)」を作り出しました。
九谷焼の五彩(赤、黄、緑、紺、紫)のうち、赤以外の四色を組み合わせ
美しいグラデーションを作る技法「耀彩(ようさい)」を生み出しました。
三代八十吉は、1933年(昭和 8)に現・石川県小松市大文字町にて誕生。
金沢美術工芸大学を中退後、祖父(初代)と、父(二代八十吉)の陶房で絵付け技術を学びました。
日本伝統工芸展や国際陶芸展など様々な賞を受賞し、海外でも九谷焼を広め、
1997年に重要無形文化財「彩釉磁器」保持者(いわゆる人間国宝)に認定。
ロンドンの大英博物館やNYのメトロポリタン美術館などにも作品が収蔵されています。
三代八十吉は2009年に76歳で旅立ちましたが、
長女が八十吉を襲名し、初代から続く九谷の世界を継承しています。
初代 徳田八十吉
1873年(明治6年) 生まれの初代八十吉は、九谷焼再興を果たしたすごい人!
江戸時代から伝わる画風「古九谷」や「吉田屋」などの再現に尽力。昭和28年に「重要無形文化財(人間国宝)」に認定されました。九谷焼の作り手が「職人」から「作家」として評価される道を切り開いた先駆者です。
九谷焼の聖地「錦窯展示館」
かつてこの場所では、九谷焼を代表する作家 “徳田八十吉” が親子三代に渡って、
制作にいそしみながら、日常生活を送ってきました。
陶房だった建物を小松市が譲り受け、1999年に九谷焼の展示館としてオープン!
伝統工芸の歴史と、親子三代の作品が楽しめる貴重な文化遺産となっています。
欄間(らんま)が2分の1に!
和室の欄間が半分に欠けています。
実は幼い頃の三代八十吉が、欄間をくぐり抜けようとして壊したエピソードが残されています。
三代八十吉は家業を継ぐのが嫌で、ダンス講師をしたり、山ごもりをした逸話もあり、九谷焼の世界に革命を起こした風雲児だけあって、ドラマ化してほしい武勇伝がたくさんあります。
めずらしい錦窯(にしきがま)をのぞいてみよう!
錦窯とは、九谷焼の上絵付のために、江戸時代から使われてきた薪で焚く伝統的な窯です。
昔は全国各地で見られましたが、現在では温度を自由に調節できるガス窯や電気窯が普及しています。
今ではかつての姿をそのままに伝える錦窯はほとんど現存せず、九谷の歴史を伝える貴重な空間となっています。
料亭「小六庵」
錦窯展示館の目の前にある「小六庵」は、小松市で創業170年余りの歴史ある料亭です。初代が錦窯で九谷焼を作っていた頃からご縁があり、食器を料亭に納めていたそうです。現在、小六庵は料亭としてだけでなく、コワーキングスペースやレンタルスペース(要予約)もされています。詳細は公式サイトをご覧ください。
こまつ町家の見所をご紹介!
錦窯展示館は、こまつ町家が立ち並ぶ大文字町の景観に欠かせない昭和初期の建物です。
昭和7年に起きた「橋南の大火」の後、昭和8年に建造され、
令和元年に国登録有形文化財(建造物)に登録されました。
庭はツツジやモミジ、キンモクセイなど、季節の木々が楽しめます。
庭から四季のうつろいを感じながら、素晴らしい九谷焼の数々が生まれていったのでしょうか。
蔵には、国会議事堂にも使用されている小松市観音山の「観音下(かながそ)の石」が使われています。
企画展「町家にたたずむ 」
特別展【人間国宝「釉裏金彩」吉田美統の景色】が本陣記念美術館にて、令和6年10月19日(土)から12月8日(日)まで開催。錦窯展示館では、関連企画として特別展を行っています。
同時代を生き、共に人間国宝となった吉田美統と三代八十吉のつながりが感じられる展示です。戦後、高校生だった吉田美統は家業のおつかいで、度々この家を訪ねていたそうです。
※吉は、″口へんの上に土(つち)″
絶対見てほしい!学芸員さんの注目ポイント
玄関には「柳色雨中深」の額が飾られています。
「柳色雨中深」…柳の色は雨の中に深し
正木直彦の直筆で書かれたこの額が初代に贈られ、徳田家の屋号は「柳雨軒」となりました。
正木は東京藝術大学の前身である東京美術学校の校長を、30年以上も勤めた人物です。
館内には、三代八十吉が製作した美しい青色の壺が展示されていました。
まるで雨に濡れているかのような艶やかさは、
「柳色雨中深」という言葉を大切にしているからこそ生まれたのかもしれません。
屋号「柳雨軒」
「柳雨軒」は德田家が代々使っている屋号です。
和漢朗詠集 に記された漢詩の一部「柳色雨中深」が元になっています。
こまつ町家がすてきな大文字町を散歩しよう!
錦窯展示館へは、小松駅から徒歩10分! 大文字町はこまつ町家が立ち並ぶ散歩が楽しい町です。
「橋南の大火」の後、昭和8年に建造された建物が多く残り、昭和初期の雰囲気を味わえます。
花屋、喫茶店、料亭など、色んなお店があるので、つい立ち止まってじっくり見たくなります。
人間国宝の作品を購入しよう!
錦窯展示館の目の前にある「広岡美術店」では、徳田八十吉や吉田美統の九谷焼を購入できます。人間国宝の名品だけでなく、骨董品やワンコインで買えるお得な品々もあります。九谷焼は用の美とされ、鑑賞するだけでなく、実用的に使えるのが魅力です。ぜひ立ち寄ってみてください!
※吉は、″口へんの上に土(つち)″
《広岡美術店》
住所:小松市大文字町37
TEL:0761-22-0216
基本情報
小松市立錦窯展示館(こまつしりつにしきがまてんじかん)
【営業時間】9:00~17:00(入館は16:30まで)
【休館日】毎週水曜日(祝日は開館)、祝日の翌日(土日祝日は開館)、展示替え休館、年末年始
【料 金】一般 300円(団体250円)、高校生以下無料
障がい者手帳をお持ちの方、または「ミライロID」アプリ提示者およびその介護者1名は無料
※特別展は料金が変更となる場合があります。
【所在地】小松市大文字町95番地1
【電話番号】0761-23-2668
【アクセス】小松空港から車で10分 北陸自動車道小松ICから車で10分 小松駅から徒歩10分
【駐車場】3台分あり
詳細は公式サイトをご参照ください。
アクセスマップ
- 小松市立錦窯展示館
- 料亭小六庵
- 広岡美術店
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